コンタクトを試みた幽霊は、貴族風の出で立ちをしている
その幽霊は、自らの事をミッドナイトと言った
ミッドナイト卿とはチコル城の主の名前である。

この城の幽霊達に協力を得るためにも
ミッドナイト卿には、協力せねばならないだろう。


チコルの失った物を取り戻す為、皮・骨・肉を集めてくることになり
代わりに城内を歩き回る許可をもらう。

少なくとも配下の霊達は、こちらに刃を向けることは無いだろう。
広間の奥へ進むと、すぐ足下に謁見の間が見える。


しかし例の結界により、進むことが出来ないので周り道をして
別方向の地下へ向かう。


舞踏会を行うような大きな広間は
瓦礫で埋れ、所狭しと様々なゾンビが待ち構えていた。

あらかじめ用意してきた爆発トラップの出番だ!
ィシウが敵の中を走り回り、引きつけているうちに罠をしかける
そのまま誘い込み、爆発で一斉に吹き飛ばした。


爆発で肉片の焦げた臭いと共に
ビチャビチャと肉片の降り注ぐ音だけが聞こえてくる
沈み切っているせいか、周りに立ち込める臭気の不快感しか感じなかったが
ィシウは隅でげえげえ言っていた。


周囲の焦げた肉片を漁り
動物の毛がまとわり付いた骨付きの大きめの肉塊を拾い集め
ミッドナイト卿へ渡した。



後は犬の毛皮を持って行けば良いだけだ・・・。
ここでふと、ある疑問が湧いた。

廃城になったのは、最近ではないはずだ。
そんな昔の犬の亡骸が残っているだろうか・・・。

考えるまでもなく残っているはずはない。
ミッドナイト卿は、現世に囚われているだけだ。
かつてこの城の住人であった者たちには影響力はあるかもしれないが
恐らく、有力な協力は望めないであろう。


それであれば、毛皮を探す事など容易い
ィシウに声を掛け斧を借りると、先程倒したコボルトの毛皮を剥ぐ。

突然そんな事をした為、ィシウは何が起こっているのか解らず、ただ息をのんでいた。


ある程度の大きさを剥ぎ取ると、踵を返しミッドナイト卿の元へ戻る

ィシウはまだ理解出来ていないようで
「お、おい毛皮を探しに行くんじゃ無いのかよ」
と言いながら後ろから続く

ミッドナイト卿へ毛皮を差し出すと
「おぉ・・・。」と言いながら渡した残骸を、こねくりまわしている。

やはり、どこか狂ってしまっていたようだ。

自分たちの他に侵入者がいないか尋ねると、数日前から、奥の礼拝堂に何者かがいたという。
信じていいものかわからないが、どの道探さなければならないし、他に情報もない。
根城がないか確認するだけでも無駄足ではないだろう。



―礼拝堂ー
礼拝堂の入り口は細くなっていて一人分の通路の先にあり
天井が一段と高く作られた小部屋になっていた。

複数のゾンビが一箇所に群がり何かをしている。
最近迷い込んだ犠牲者だろう・・・。

彼らもフレッシュミ―トの方が良いのだろうか
ゾンビ達はこちらに気がつくと一斉にこちらへ向かってきた。


向こうの数は多いが、冒険にも慣れてきているし、こちらも一人ではないので
流石に苦戦しなかった、だが一人では危なかったかもしれない。


一息つき、あたりを探してみた所
何人か人のいた形跡はあるが、手掛かりになりそうなものはない。
となると調べる所は、必然と一つに絞られる。


喰われていた死体を漁ると、ある特徴に気がついた
港で相談された行方不明の男の特徴に一致している。

盗賊の一味だったのだろうか・・・。
でも依頼人の男は、一人でチコルに入り込んでいたと言っていた。
明かりを確保するためとはいえ
ひとりで、こんなに大きく焚き火をするだろうか・・・。


立ち上がった瞬間、元いた場所にめがけナイフが飛んで来た。

盗賊のお出ましだ、向こうから来てくれるのはありがたい!
入り口が細くなっているお陰でィシウの存在は、まだばれていない
ィシウが入り口で斧を構えた。


それを確認し、わざとらしく叫んだ
「うわっ待ってくれ!命だけは勘弁してくれっ!何でも持って行って構わないから!」

入り口に三人見える。
声の代わりに三回足をならしィシウに合図を送る
合図がわかったのかィシウは頷くと
二人目が入ってきたタイミングで斧の腹を相手にめがけ振り下ろした。

ゴッっという鈍い音と共に二番目の男が地面に崩れる。
慌てる男達目掛け走り寄ると、先頭の男の太腿を切りつけた。
顔を上げると三番目の男は、すでに逃げ出しその場にはいなかったが
注意する必要はありそうだ。

男二人を縛り上げ、楽しい尋問の時間の始まりである。
先程の冒険者の手荷物から松明を拝借し、斧で叩き割った破片を針のようにする。
その木製の針を男の指と爪の間に当てがった。


城にいた頃、イタズラをすると
尋問官によくこんな事をするぞ!とおどかされていた。
話に聞いていただけだったが、こんなにも効果があるとは驚きである。



やはり首飾りは、この男達の仲間が盗み西の大富豪「アダコーン」へ売り飛ばしたようだ。
その屋敷に案内するよう男達に命令すると、文句を言い出したので
改めて優しく木製の針で「オネガイ」をしたところ
快諾してくれた。本当に凄い効果である・・・。


目指すはアダコーンの屋敷である。


冒険者の遺体を漁り形見を取りゾンビ化しないよう火をつけた。
焼け残った遺体の一部も持ち帰ってやろう。
だが、申し訳ないが屋敷が先だ。
手も出せず一連の流れを見ていたィシウは何故か隅っこでガタガタ震えていた。


―アダコーンの屋敷―
屋敷に着き珍しい物があると伝えると
従者のポークルは屋敷へ迎え入れてくれた。


屋敷の中は大きな甲冑の石像や大きな壺など
沢山の珍しい物があった。
アダコーンは、私が見たことのない珍しい物であるなら
その辺のコレクターよりも弾むと言った。


何を持ってきたのか問われたが
単刀直入に王家の首飾りの持ち主だと主張した。
初耳であろうィシウはビックリした表情を投げ掛けて来ている。


「この首飾りが、そなたの物であるということだが
ハッタリや盗んだものでない証明が出来るということだな?」


自国の紋様が描かれている首飾りであるが
確かにそれを、自分のものと証明する術はない

それを見透かしたようにアダコーンはこう言った
「本当にこの首飾りの持ち主であるならば、証明をすることなぞ容易いぞ?
一滴で構わん、そなたの血をこれに渡してみよ」


そう言うと従者に大針と金の小皿を渡した。

従者はこちらまで来ると指を出すよう促し、指から数滴の血を皿に取ると
アダコーンへ差し出した。


余程大切にしているのか、懐から首飾りを取り出し
金の皿の血を一滴首飾りへ垂らした。


その瞬間、空気が変わり首飾りが青く淡い光に包まれた。
「ほほぅ・・・」
目を細めながらアダコーンが唸る

その光が収まるとアダコーンは
「首飾りの持ち主というそなたの言い分、間違いないであろう。
それを踏まえたうえで、こちらは相談だが、正式にこの首飾りを譲っていただきたい。
当然タダとは言わん、20万出そう。」


に、にじゅっ・・・。
あまりの金額に驚きィシウは固まってしまっている


だが、幾ら積まれたとしても首飾りを手ばなしたく無かった。
追い打ちをかけるようにアダコーンは言った。

「ただし、この金額はこの場で即決した場合のみだ。
当然、首飾りを返すつもりはない。潔く金と引き換えに首飾りを諦めるか
それともこの警備の中、実力で取り返すかね?」

そう言って周りの護衛に目配せをすると
人形のように身動き一つしなかった護衛達が一斉に槍を構えた。


「一晩考えさせてください。」


応接間を後にする背中に向けてアダコーンは言い放った
「明日になるならば、支払う金額は8千だ、加えてそなたの血を一瓶も貰おう」
始めからそのつもりであったのだろう。何が相談なものか・・・。


アダコーンの手配した馬車でイルファーロへ向かう
自分の中でどれだけあの頃の思い出が大切だったのか再認識する
首飾りを引き換えにすれば、前に進めるという事はわかっている。

だが国を取り戻すと誓い、何一つ守れず全てを失っている今となっては首飾りですら失うのが怖い。
進む方向があっているのかさえ分からない状態で、前に進む為の勇気が出ないのだ。

ィシウが元気づける様に声を掛ける。
「まぁ、ゆっくり依頼をこなして、お金を貯めたらいいじゃない。」
「亡骸を引き渡しに行きがてら、美味しい話でも探すとしますか。」

―港―

その男は、冒険者の亡骸を抱えながら思い出すように語り出した。

コイツがよく言ってたよ
『金を失うのは小さい事で、名誉を失うのは大きい。
だが、それらに気を取られ勇気を失うという事はすべてを失う結果になる』ってさ
結局、命まで失っちまって・・・。
バカだよまったく・・・本当に・・・。


手間をかけて、すまなかった。ありがとう。
男は最後にそう言った。
男から謝礼を受け取り帰路につく。


『勇気を失う事は全てを失う』か・・・
宿に着いてからも今の自分の事を言われているようで
その言葉がずっと頭から離れなかった・・・。
		

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