ユニオン管理局の前で、2人のポークルが騒いでいる
どうやら設立するユニオンの事で揉めている。

ユニオンの設立には
他と重複していないユニオンの名前と事務手数料10,000Gが必要になる。
揉め事の原因はどうやら、どちらがユニオンの名前を決めるかという事のようだ

ィシウと呼ばれていたポークルは
「必要な手数料が貯まるまで時間が必要だし1Gでも多く出した方が
名前を決める事にしようじゃないか!こっちには1,000Gもある。
名前を考えながら貯めとくよ」と言い放つ

するともう一人は
「じゃあ残りの8,970G貯まるまで、お互い勝負だ」

「なんで稼ぎを等分してんのに30Gしか持ってねえんだ
ふざけんな!オレが名前考える!!」

「多く出した方が命名するって決まっただろ!!ふざけんな」

「等分してんのに無理だろ諦めろ!」

「うるせーこっから巻き返すに決まってんだろ」
と言った具合である

「はいはい、ボクたちー?冒険ごっこは仲良くやろうねー」
二人の声が荒っぽくなった頃から
こちらをチラチラ見ていた衛兵が堪り兼ねて仲裁に入る
「「子供扱いすんな!!」」

綺麗に同じタイミングで同じ事を言い返すと
今度は「言う事被ってんじゃねー」と言い争い出した。

「お金必要なんでしょ、元気があるならダンジョン行きなさい。」
衛兵が呆れながら、追い払う仕草をする。

こうなったら、早く稼いで命名するしかない。
その日は、二人でギルドの仕事をひたすら消化し、二人合わせて1,000G程稼いだ所で力尽きた。

その夜、故郷の事を思い出していた。
こちらに来てから、もう2ヶ月が過ぎようとしていた。

「もうすぐ誕生日か・・・」
王家の首飾りを取り出し、ぼんやりと想いを巡らせていた。

どれ位経っただろう。自分のあくびで、我に返った。
今日はもう遅い。寝よう・・・
明日も生活費のためにダンジョンへ潜らなければならないのだ。

「へぇ・・・良い物持ってるじゃないか・・・」
こっそりと様子を見ていた人影は
その首飾りの価値を確認するかのように呟いた。


ー翌朝ー
冒険の準備をしている最中に気がついた。
昨日も眺めていた王家の首飾りがないのである。

それは、国外へ脱出する際、身を寄せていた盗賊団の人達が見つけてくれた物で
自国の紋章の入っている首飾りである。
商人によって他国へ持ち出されそうになっていたものであろう。

出国の際受け取った大切なもので、肌身離さず持ち歩いていた。
それが見当たらない。どんな時も首から外したことはない。

可能性があるとすれば、千切れて部屋に転がっているか
盗まれたのであろう。


「ネズミでも追いかけてるのかい?」と目をこすりながらィシウがやって来た。

「首飾りだよ!首飾り!おう・・・盾の紋章のついた首飾りがないんだよ!!」
危なく王家の首飾りと言いそうになる。

「いつの間にそんなもの手に入れたんだよ、隠し持ってるなんて汚ねえなぁ・・・」
ィシウは冗談まじりにそう答えた。
必死に探す姿を見て、余程大切な物と思ったのか
「まぁ、丁度外に行くから何か情報があれば、持ってきてやるよ」
と言って外へ出掛けて行ってしまった。

陽が頭の上に来る頃まで出かけていたィシウが帰って来た
「あったぞ情報だ!じょうほっ、うわっ・・・
だ、大丈夫か?」

沢山の荷物が散乱している部屋で
茫然自失しているフェンを見て心配そうに尋ねる。

情報と聞いた途端、元気になったのか
ィシウの襟首をつかみ、ブンブン振って話しをせかした。

直接首飾りに繋がる情報ではないが
西に大きな館を構える大富豪が最近、特に珍しいものを求めており
物によっては、家が建てられる程の金額を出すという。
これに目を付けた野盗が近隣の宝物庫を荒らしているそうで
チコル城址を根城にしているらしい。

丁度カオカパラージで入場許可書も手に入れている。
早速準備を整え、チコルの情報をあつめる。
野党達は夜チコルに集まってくるようだ。
夜まで時間はある、もう少し情報を集めてみよう・・・。

チコル城址はその名のとおり
既に廃城となっており、コボルトやゾンビの巣窟になっているという
中には幽霊の姿を見た者もいるようだ・・・。

立ち寄った港で、ある男から友人捜索を頼まれた。
そんな場合ではないと断ったが、男の必死さに
もし見かけたら連れ帰る程度に話をし、特徴だけを聞きその場を離れる。

ーチコル城址ー
じっとりとした重たい空気の中
カビと埃の混じった独特の臭いがする。

廃城となった経緯は分からないが、徘徊しているアンデット達は
かつてこの城の住人だったのかもしれない・・・。

自分の住んでいた場所と重なり、気持ちも沈んでいく
そんな自分を元気付けようとしているのか、ィシウがはしゃいでいる
気持ちはありがたいのだが、そんなに簡単な事ではない。
沈んだ気持ちのまま、奥の中央広間へと向かった・・・。

そこは、荒れてはいるものの比較的綺麗な場所で
中央にある石碑の上にある天窓から、月明かりが入り込んでいる。
ぼんやりとした月明かりに照らし出された、中央の石碑のすぐそばに
人影が見える・・・。

しかし、なんだか様子がおかしい。
「不審な行動をしている」という意味ではなく
見えている姿が時折、ノイズが混じったように歪んで見えるのだ・・・。

例えるならば、水溜りに映した人物を見ているようで
時折起こるノイズは、石を投げ込んだ時のように
全体が認識できなくなるほどだった。

「あっ」
無意識のうちに指を指していた。
はしゃいでいたィシウが、その行動につられ指差す方向に振向くと
目を白黒させながら一気に大人しくなった。
噂に聞いていた幽霊だ。

噂話しの幽霊なんて、出てくることがないか
帰り際にそれらしいものが出てくるのが一般的では無いのだろうか。
初めからクライマックスだなんて、何処かの鬼の話だけのはずである。

だが、気持ちが沈んでいて冷静な判断が出来なかったのであろう
恐怖のあまり恐慌状態に陥っているィシウを尻目に
その幽霊に近づくと、話しに耳を傾けた。
		

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