盗賊団には色々な人達がいた。

力自慢の大男や軽業師の様な細身の者、変装を得意とする者、情報を聞き出すのが上手い者
女性や子供達にすらその能力に長けている者もいた。
病弱で寝込んでいる子供もいた。


馴れて来る頃には、子供達の相手をして過ごした。
元気な子供達にはお得意の剣を教えた。


短剣だとやはり勝手が違うが
昔隊長に教わったコツ
「腕前は武器の特徴を理解すること・体重の掛け方・剣の運び方次第で決まる」
と言うのを思い出し、すぐにコツを掴めたので教えることができた。



寝込んでいる子には読んだ本の知識を披露した。
もっとも勉強をサボっていたので
博識などには程遠く大まかな知識しかないので細かい部分については誤魔化しておいた



盗賊団の子供達はとても器用で
針金のようなもので、容易く玩具の宝箱の鍵を開けていた。



見ていると簡単そうだったので
試しにやらせて貰ったが、全く開かず
失敗すると飛び出す仕掛けに大層驚き、子供達に爆笑されてしまった。


この玩具はあのガタイの良い男つまり頭領の発案らしい
これで解錠の腕を磨くという訳だ
1ヶ月もする頃には、10回に1回ぐらいは開けられるようになったが
元々細かい作業は苦手なので盗賊には向いてないようだ。


まぁ当然と言えば当然なのだが・・・


段々と自分に掛けられている賞金額もUPしているらしい。


2ヶ月目の半ば
子供一人見つけられないとあっては諸侯に面目が立たないからか
自分に掛けられた賞金も結構な金額になり
1ヶ月食べ物には不自由しないぐらいの賞金額になった。


叔父の息子の誕生日が近づいており
その式典の前に面子を保ちたいのと併せ不安要素を取り除いておきたいのだろう


元々頼ろうと思っていた辺境伯は既に討たれてしまっているようだ
ただ、王国の南側の公爵は
元々叔父と不仲のため中立を保っているという


南の公爵は、その先にある戦闘部族にも顔が利き、公爵の治める地は武器の都でもある。
ここを味方にできれば 、道は開けるだろうとのことだった
ただ、そこへ向かうには王都を通らなければならない。



綿密に計画を立てなければ、すぐに見つかってしまうだろう。

かといってゆっくりもしていられない
他の地域の紛争が沈静化してしまえば、交渉次第で公爵を傘下に迎えることも可能であろう。
自分一人では何もできないのはわかっていたが一人じりじりして過ごした。




一週間後、遂に準備が整ったと連絡があった。
叔父の息子の誕生日祝いということで、宝石や絹などを献上する事になっているらしい



本来、義賊行為を行うこの盗賊団には献上するような贅沢品はないのだが
敵国の商人を襲い金品を調達してくれていた。


自分達の生活を潤す事も出来るだろうに、そのお金を使ってくれるという・・・
本当に平服をしなければいけないのは自分の方かもしれない・・・


作戦というのは、献上品の荷物に紛れ王都付近へいき本隊と別れ
森を迂回し、そのまま武器を仕入れる名目で
南へ向かう本隊へ合流する。という作戦だ
コレで各地に張り巡らされた検問所は突破できるだろう。


南側にも検問所が、全くない訳ではないが、いざとなったら
迷惑にならないよう自分だけで何とかしよう。そう決めていた・・・



作戦当日頭領が選んだ4人と
志願者の1人で王都へ向かうことになった
王都まで距離があるため
夕刻に出発し夜を徹して王都へ向かい翌朝到着する予定だ



暮れ刻に検問所へ向かえば、兵士達の疲れも溜まっており
検問所の閉鎖時刻も近いため、ろくに検査もされないだろう。という訳だ



案の定身の危険を感じないまま
最後の検問所を無事に通り過ぎることができた。


始めの方はビクビクしていたが、だんだん危機感も薄れ
最後は声のしない方からちょこっと顔を出したりしていた。



朝方二手に別れ森を迂回し南門が見える丘で待つことにした。



こちらには、あの時担いでアジトへ運んでくれた大男が一人ついてくれた。
そこで用意していた朝食を取り
雑談しながら本隊の到着を待っていた。



そういえばアジトで目覚めた時、平民の服装をしていた。
だから頭領もなかなか気がつかなかったのだろう
だいたい予想はつくが、気になったので着ていた服がどうなったのか大男の聞いてみた。



「!?なっ、何を急に言い出すんで?ささっあっしの分の干し肉も食べてくださいよ」
きっと衣服を売って細身の男と山分けし飲み代にでもしたんだろう


今まで世話になっているし、怒るつもりは全くないが
あの羽織はふかふかしていて一番のお気に入りだったのに!!
これだから盗賊は・・・



その丘には少し大きな川が流れていた。
川は海へとつながっているらしい。




海は大きくて水はしょっぱく、その水から塩がとれるらしい
ウトウトしながら勉強をしていた本に、確かそう書いてあった。



川の水は何処から来るのだったか・・・
どうせ海の水から塩をとった商人が
湖にすてて溢れた水が川にでもなるんだろう
きっとそんなところだ・・・


そうこうしているうちに本隊が到着した。

ここから先は丘が続き少し道も険しくなる。
急がないと最後の検問所で足止めを食ってしまう



――――その矢先、志願者の男が足を捻ってしまった。
これでは大幅に遅れてしまうだろう。


少し休み、あとからゆっくり向かうので気にせず先に行って欲しい
との男の提案を受け入れ先へ向う事にした。
それならば、一刻程度で丘を一つ超えられるだろう・・・



志願者の男と別れ丘を下ってゆく。


半刻もしないうちに高低差で姿が見えなくなる。


その先の丘を登りきった所で異変を感じた。


いない・・・居ないのである。


あの志願者の男は確か病気の子供の父親だ・・・
嫌な予感がする。


「先を急ごう」
ここでは一本道だ。


追手がきた場合脇道へそれてやり過ごすことすら出来ない
もう一つ先の丘の頂上へ到着した時
砂煙をあげて走って来る一騎の王国兵の姿が見えた。旗を掲げているので間違いないだろう。


「谷側でわざと脱輪させて往生しているように見せよう。王子はその間に隠れて下さい。
いざという時は南の村で落ち合いましょう。」
促されるまま、岩場の影へ隠れた。
		

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