「やれやれ・・・今日は面倒事が重なるなぁ・・・生き倒れが居るぜ」

野太い低い声で目が覚めた。まだ意識が朦朧としていて気を抜くと気絶してしまいそうだ・・・

起き上がろうとしたが、やはり全身がいう事を聞かない。

「おいコイツまだ生きてるぜ・・・どちらにせよ、カシラのトコに持っていかないとだな」
ウンザリしたような別の声が聞こえる。

突然体が軽くなり、もさもさした臭い何かに乗せられた。

「まだ子供で助かった、大人だったら重くてかなわんからなぁ」
野太い低い声が言った。

遠くなる意識の中、今後どうなるのかよりも、この臭いはどうにかならないものかなと思っていた。


「王子いい加減に起きてくださいませ」
いつもの召使いの声で目が覚めた。

「・・・!」

酷い夢もあったものだ、自国の王座が簒奪される夢を見るなんて・・・

悲劇の主人公になりたい願望でもあるのだろうか。

夢であった事に気を良くし、さっさと着替えを済ませた。
「今日は随分と機嫌がよろしいですねぇ。いつもはむすっとしていて
何から何まで私たちのせいに致しますのに・・・今までで一番王様らしいですよ」
などと皮肉られたが、今日の所は反撃しない事にした。

朝食を済ませ、父上・母上の元へ朝の挨拶の為、召使と共に向かった

既に公務の時間となっている為、謁見の間へ向かったが
その部屋の手前に、慌しく歩き回る大臣の姿があった。

大臣は自分の姿を見つけると、驚いた様に庭園の時計と自分の顔を交互に何度も見た。
「何時もより二刻以上も早くご支度されるとは、働き過ぎで幻覚が見えたのかと思いましたぞ」

全くひどい話だ。

ほんの少し早く支度をしたぐらいで、みんな寄って集ってこんな事を!
とふくれながら父上へ謁見する。

「おお、早いなようやくお前にも王の貫禄がついてきたかな」

「そんな事ばかり申してはこの子が可哀想ですよ、
こんなにふくれて・・・きっと皆からも囃されたでしょうに・・・
今日は勉強の遅れが取り戻せるように励むのですよ」
大笑いしながら言う父上を、母上が制しながら言った。

挨拶も終わり謁見の間を後にする為、扉を開け放った瞬間、強い光が目の前を覆った。



目を開けるとそこは、見たことのない場所で
固い地面に申し訳程度の布が敷かれた場所へ横たわっていた。
見上げると布のような天井が見えるだけだ・・・
外から射し込む日の光と、地面の冷たさが現実であることを否応なしに知らせてくる。

「そんな・・・」

激しい絶望が口を吐いた、乾いた音と共に水音が耳へと入ってくる
同じ歳程度であろうか、少女が驚いた表情をこちらへ向け走り去った。
逃げるべきだろうか・・・
立ち上がろうとしたが身体がいうことを聞かず、仕方なく運命へ身を任せることにした。

暫くすると大男と細身の男と共にガタイの良い男が入ってきた。
他人のそら似だろうか、何処かで見た覚えがあるが、王宮に平民が出入りをしている訳もない。

「まず名前から聞こう、それから何故俺達の縄張りで倒れていたのかもな!
・・・お前を、どうするかは、それを聞いてから、判断するとしよう」
ガタイの良い男は、何かを思い出すように自分を観察しながら話した

今は誰が敵か味方か解らない状況だ、ここは一つ・・・

「何もわかりません・・・ここはどこで何があったんですか?名前・・・?」

と記憶がないふりをし口ごもって見せた

するとガタイの良い男は何かを思い出したかのようにハッとした表情を見せた

――――嘘だとばれたか・・・
そう思った瞬間!ガタイの良い男は突然平服した。

大男がたじろぎながら、野太い低い声で言った。
「カ、カシラ一体どうしたっていうんです?」

そこにいた人達にも動揺が広がった。
「馬鹿野郎!さっさと平伏しねえか!!このお方は俺たちとは身分の違いすぎるお方だ・・・
そして俺の命の恩人だ!」

		

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